MENU

第16話 違和感 いいわけ 改善

連続して気に入らない塗装をしてしまったわけですが、今思えばそれは必然的なことでした。あまかったです。

ハチマル修理にかかる際に、クリヤーがめくれていたトラブルを塗料屋のデモンストレーターTさんに実車を見てもらい、相談にのってもらいました。

その時にひとつ提案してもらったのが、どうせ補修するのなら、いつも使っているクリヤーとは違うクリヤー(同一メーカー)を使ってみたらということでした。

今まで使っていたクリヤーも決して低いランクではないのですが、こうして実際にトラブルが目の前で起こっていましたし、Tさん提案のクリヤーは後発で*ランクも上だということでした。(*耐久性‣耐候性・美観・環境対策)

Tさんも個人的に、自身の趣味のバイク塗装にそのクリヤーを使ってみており、外車のようなヌラヌラした奥行きのある透明感が出せ、経過も良好で気に入っているとのことでした。ただし塗装するのに「くせがつよい」とのこと・・・

さすがにいきなり本番デビューは危険なので、ゴミ置き場からフェンダーの廃棄パネルを拾ってきて試し塗りをしてみました。

透明カップにクリヤーと硬化剤をマニュアル通り(シンナーなし)に調合し、ヘラでよくかき混ぜるのですが、その時の手に伝わる感覚が少し「ねばく」て「かたい」感じがしました。

さっそく配合済みのクリヤーを廃パネルにスプレーしてみると、いつものスプレーガンの設定では塗りにくさを感じました。(使用スプレーガンは塗料メーカー推奨品)

違和感あり。

一瞬で感じました。塗りにくい・・・

こんなので塗れるんか?

第一印象「かたい」「ねばい」という感じでした。

基本的にはメーカーのマニュアルは厳守です。絶対です。配合比なんか特に。

塗装の技術で「腕」は確かにあると思います。

ただ、その技術の中に、「塗料の性質をどれだけうまく発揮させられるか」という要素も含まれます。料理でいうと「素材の持つ味を引き出す」といったところでしょうか。

そうした塗料にうまく仕事をしてもらうためには、塗料を研究開発しているメーカーの言うことを守ることは当たり前なことです。

順調に作業を進ませ、塗料の品質的にも以後保証できるものでなければならないといったことにも関わる大事なことです。

そして、この塗りにくさ「違和感」を改善するためにはと経験上、真っ先に頭に思い付いた考えは「シンナー増量」でした。

これは長年塗装してきて自分の中に出来上がっている感覚のマニュアルです。

いつもの塗装作業でこの違和感を感じたら、当たり前のようにそう動きます。シンナー増量、でも少しだけ。マニュアル通りの配合は厳守しているからです。

ただ、今回試みるクリヤーは環境基準対策に適合した最近のタイプのクリヤーでして、メーカーの出すマニュアルではシンナー配合なし・ゼロでした。(いままでのやつは30%くらいシンナー入れてました)

事前にTさんからは「もし塗りにくければシンナーを5~10%くらいなら…僕そうしてますよ」と聞いていたので、シンナーを10%ほど追加しまた試し塗りしてみました。

ダメじゃ・・・かわらん・・・塗りにくい・・・

そして次に、すぐその場でとった行動が「ガン設定」、塗料吐出量のつまみねじを適度に開けました。ある程度ドバっと出るように。

かたくてねばい塗料がスプレーガン先端の小さな穴から出にくい感じなんですよね。

本来、もっとサラサラ~、すらすら~、シュパーっとスプレーできないといけないんです。それができない。

冬の寒い時期なら、クリヤーを湯せんして温めてからスプレーすると塗りやすくなります(当社ではクリヤー専用自作保温庫あり)が、このとき季節は夏でした。

「メーカーのマニュアル厳守」でこれ以上シンナーを増やすのは、クリヤーの仕上がりや品質維持に不安だったので、それじゃあガンの調整と自分の塗り方をこのクリヤーに合わせていこうとみたび試し塗りにトライしたのでした。

ガン設定いじって、自分のスプレーガンの速さ(左右へ運ぶ)やフェンダーパネルとの距離を調整してみて、だましだまし、まあこれくらいならどうにかなるかなといった感じで試し塗りを終えたのでした。

そして塗装本番。

白パール本番塗装の一発目クリヤーはルーフの塗装から入ったのでした。

ルーフは塗料が流れにくい平面なので、クリヤーは結構思い切り塗りこみます。塗りこんだところで勝手にベターっと伸びてくれるので、塗装肌はそれほど気にしなくても構いません。塗りにくいながらも塗装を終え、出来上がったルーフも違和感なく普通にきれいでした。

次にボンネットも同じように平面なので、クリヤーはしっかり塗り込みました。平面に関しては個人的には肌は不要に思っており、鏡面でツルツルでもよしとしています。肌が多少小さくても、ペーパーかけて磨けばいいと思っていました。

ルーフ(平面)、ボンネット(平面)、その次に、わざわざ狙った肌を出す目的でパネルを立てて塗装したバックドアとリヤハッチ。

塗りにくいながらも、一生懸命クリヤー肌を作ろうとした結果があの有様でした。

↑横一線の大流し・・・↑ダッラ~~~~~~~~

20年塗装を第一線でやってきた者の業じゃないです・・・(泣)

同時に塗ったこいつも↑・・・素直に同じように流れてます。塗った直後ではなく、少し置いているとだんだんと伸びて溜まっていき、雪崩のようにブワッと・・・

2パネルとも似たよな流れ具合。言い換えると、マシンのように塗れているあかしなのでしょうか(笑)

まぁ、あまかったんですね・・・試し塗り時、あれでなんとかなりそうって判断したのが。

そしてもう一つあまい判断。

いくら「メーカー指定の配合厳守」だったとしても、試し塗りでそこまで塗りにくいのであれば、自分自身の経験マニュアルの方でもこれなら塗れるという調合で実際にテストしてみなかったあまさを悔やみました。

実際に現場で痛い目にあい、しんどい目にあい得てきた、我が身をもって知り得た大事な大事なマニュアルを軽視したこと。

メーカーのマニュアルも大事やが、わしの実践マニュアルだって現場でうまれてきた「生きたマニュアル」じゃ!と自分を信じてやらなかったこと。

失敗したことよりも、そっちのほうがダメージ大きかったかもしれません。

色々な意味で再確認できました。

まぁそれはそれでよかったです。

自分を買いかぶることは良くないですし嫌いですが

自分の違和感だとか、経験に基づき、違和感のないところで初めて発揮される技術や品質であることを的確に判断できてないことを悔しく思いました。

逆に言うと、それほどシビアな感覚の世界で毎日を生きているということです。

スタッフみなさん!

職人のみなさん!

お疲れ様です!

みんなすごいんです。お互い褒めあいましょう!そして自分を褒めてあげましょう!

「できてあたりまえ」でいるからみんな自分の尊さに気づかず、マンネリ化してやる気も下がり、自社愛までも薄れていくんじゃないの?もったいないでしょ?さみしいでしょ?

「バッチリやん!」「うまいね!」「ようやったね!」

褒められて嫌な気になる人間などいませんから。

あ、でもウソやおべんちゃらはすぐ見抜かれてNGですけどね。

少し脱線しましたが、改めて調合したクリヤー(シンナーかなり増量)で試し塗りをし、確認しなおしたのは言うまでもありません。

メーカーのマニュアルから外れるのは本当は怖いんですけどね。あちらもプロ中のプロ、研究開発側ですからね。だから実際にテストしてみます。

第17話へ続く

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次